株式会社サイム 代表取締役 土田 保雄

事業の背景

株式会社サイムの社名は、創業時に土田社長が、10年先を見据えて「21世紀はリサイクルの時代(タイム)だ、リサイクルを通じて社会に貢献したい」と言う社長の思いから命名されたと話してくれました。

「創業した頃はまだ『環境』というキーワードは注目されていませんでした。」と土田社長は当時を回想します。同社は今から20年ほど前の1990年に中古パソコンの卸売業社として創業。その市場が活況を呈している2000年に、次の事業を見据えた動きとしてプラスチックのリサイクル事業を開始しています。

土田社長が10年先のビジネスについて思い立った経緯をこう語られます。「お客さんの『困ったな、何とかならんか』ということを解決することで、我々のような中小企業は生きていけると思っています。例えば、ここにある粉砕プラスチックこのままだと色々な物が混ざってしまっており、ただのゴミなんです。しかし、これを上手に分ける事が出来れば、また再利用することが出来る。当時、これこそが次の10年における可能性ではないかと思ったんです」。

挑戦とK-RIPの有効活用

❶新事業への挑戦の契機

 プラスチックのリサイクル事業を開始した当時、粉砕プラスチックは埋め立てや焼却といった方法で処分されてあり、リサイクルされてはいませんでした。

土田社長は、「廃棄されているプラスチックの品質の良さや排出される量を考えると、このまま捨ててしまうのはもったいない」と考え、より精度の高い分別技術の研究・開発に力を入れることを決意します。

さっそく近畿大学産業理工学部の河済教授と共同研究を開始し、その後、最初の成果として2005年に「ラマン散乱光による識別方法及び装置」というタイトルの特許を申請・取得します。

同社の技術はリサイクル分野で注目を集め、九州経済産業局から、2006年度から2年間にわたり、地域新規産業創造技術開発費補助金を受け、世界で初めてラマン分光法を用いたプラスチックの選別装置の研究開発を行い、見事、装置を完成させ、関連特許も取得しました。

同社はその後も技術開発を続け、化学センサーを用いたこれまでにない製品として他分野からも大きく注目されています。

❷K-RIPプロジェクトの活用

同社の開発事業は、2009年、K-RIPプロジェクトでも採択され、同支援ツールを活用し、販路拡大に取り組んでこられました。このほか、K-RIPが行う各種事業にも積極的に参加し、人脈形成、情報収集・提供、知識・ビジネススキルの向上等に努めてこられました。

そして、同年、フランスのパリで2年に一度開催される環境展の日本貿易振興機構(JETRO)ブースで同装置を展示・発表し、見事、イノベーション賞を受賞。

また、2012年には、ドイツで4年に一度開催されるIFATにも出展されるなど、国内・国外を問わず精力的に活動されており、「海外からの問い合わせも順調」と土田社長はほころび顔です。

最近では、受注増加やマーケティング調査を目的としたK-RIPの販路拡大プロジェクトでも採択され、国内4カ所の展示会にも出展し、「新しい案件も増え、新たなニーズが見つかった!」と、K-RIPのネットワークの活用が同社に大きな飛躍につながっていることが伺えます。

 

〔分別前の廃プラスチック〕

〔ラマン選別装置〕

〔K-RIPが参加する環境見本市に出展〕

将来のヴィジョン

❶リサイクルを通じて社会に貢献 

 循環型社会の形成が叫ばれる昨今、創業当時に社長が10年先を見据えながら抱いた「21世紀はリサイクルの時代(タイム)だ、リサイクルを通じて社会に貢献したい」という思いを原動力にこれまで歩んできました。

 

 その中でK-RIPなどの支援を受け、ラマン分光法を用いたプラスチックの選別装置(Raman Plastic Sorter)やプラスチック識別装置(Raman Plastic Identifier)を市場投入することができました。

 ❷次の10年先に向けた挑戦

 同社の土田社長は、「今後、ラマン選別装置の普及により、世界各地で処理に困っている廃プラスチックの有効利用に寄与したい。」、同時に「次の10年先に向けた挑戦を今後も続けていく予定です。」と語られています。

 21世紀の社会生活基盤固めと継続的な社会発展に貢献できる企業を目指し、同社の飽くなき挑戦は続きます。

Topics

同社が開発するラマン分光法を用いたプラスチックの選別装置(Raman Plastic Sorter)やプラスチック識別装置(Raman Plastic Identifier)は、ユーザーからも高い評価を得られております。是非、お気軽にお問い合わせください。

 

〔プラスチックの選別装置「Raman Plastic Sorter」〕

〔プラスチック識別装置「Raman Plastic Identifier」〕

企業名
株式会社サイム
代表者
代表取締役 土田 保雄
創業
1991年
資本金
2,300万円
住所
福岡県嘉穂郡桂川町吉隈430-42
主な事業
パソコンなどコンピュータ関連機器の回収、データ消去、リユース、販売など。廃プラスチック素材のリサイクル業務、リサイクル技術の研究開発など。