事業の背景
1996年創業の一級建築士事務所「(有)ロクス」の社長として建築デザインに特化した事業を進めていた村上社長は、2000年頃、ある住宅の現場で床下暖房に使用される熱効率の良いヒートパイプの優れた技術に出会います。当時はデザイン性と省エネ性の両立を目指した新たな方向性を模索していた頃でもあり、また建築の分野も環境に配慮する必要性を強く感じていました。そこで、CO2対策に効果的な木造建築に、環境・省エネルギーの大きな可能性があると感じ、地産地消による高性能エコ住宅の開発を目指すことになります。
挑戦とK-RIPの有効活用
「エコウィン」は発売された2007年に第4回エコプロダクツ大賞「国土交通大臣賞」を受賞するなど数々の賞を受賞しました。また、K-RIPと九州経済産業局が主催する「エコ塾」に2007年に登壇し、製品のPRを行いネットワークを拡大し、販路拡大に繋げていきました。2009年にK-RIP会員となった同社は、さらに同年の「K-RIPプロジェクト」に採択され、「フィリピンにおけるテストマーケティング及び販路拡大、ASEAN域内、アジア、欧州市場に向けた展開の基盤構築事業」を実施した結果、海外市場での反応を把握し、海外展開に向けた社内整備を構築し、中国広州のヒートポンプメーカーとも技術交流を行い、海外向け熱源機を実用化しました。2010年1月と2011年1月にはK-RIP主催の「九州・遼寧省環境ビジネスミッション」へ参加し、中国企業の小雨集成房屋有限公司との商談や相互業務提携調印、共同事業の実施に係る合意締結を経て、2011年10月に合弁会社を設立。そして、2012年5月に現地工場も完成し、エコウィンの現地生産が6月から段階的に開始されました。さらに、2011年には優れた環境技術として第4回「九州環境ビジネス大賞」の大賞を受賞し、エコテクノ等でのプレゼン、K-RIPの広報ツール(機関紙、HP、メルマガ)による紹介等が行われました。この結果、同社の知名度と信頼性が高まったことにより商談が増加し、売上は2009年のK-RIPプロジェクト採択時から九州環境ビジネス大賞を受賞した2011年までに約4倍に増加するなど目覚ましい躍進を続けています。
将来のヴィジョン
日本国内では、新技術の導入により更なるコストダウンを進め、市場のニーズに応えながら、去らなるサービスとシステムの向上を図り普及を加速させます。2015年には株式公開を目指しています。「中国国内では2012年度は、約1,000台の生産を見込んでいます。コア技術であるサーモエレメントは日本で生産して輸出し、現地工場で完成させ、現地の代理店が販売するという形です。このビジネスが軌道に乗れば5,000台、10,000台と生産台数を伸ばしていきたいと思っています。2012年度の販売先は、中国の官公庁施設や、現在需要が急激に高まっている別荘の様なログハウスを予定しています。そこからはいずれは一般住宅の大きな市場にも拡大して行きたいと思っています」と村上社長は力強く語ってくれました。
Topics
「子供たちの未来に、この豊かな環境を守り繋げたい」という村上社長の一人の想いに多くの協力者の賛同を得て「エコウィン」は生まれました。現在はエコ住宅から公共施設へ、創エネと畜エネ、未利用エネルギーの利用と併用したスマートハウスやスマートビル、大型アリーナ、関東域の大型老人ホームへの導入も計画されています。既に、市民の健康や環境に配慮した施設として、熊本県産業技術センター、熊本市西区役所、熊本市城彩苑などの公共施設、宮崎県都城市の老人ホーム、鹿児島県曽於郡の保育園、大阪府堺市の保育園等に導入されています。また、高級オーディオのリスニングルームへの設置、最近では、熊本市上下水道局への採用、行政の庁舍、病院、精密機器の開発をするクリーンルームへの提案など、利用者の健康快適性の向上や、節電や省エネに対するニーズの高まりに応える環境に配慮した製品という強みを活かした市場開拓も行っています。北は北海道から南は沖縄まで、全国コンソーシアム「チームエコウィン」を組織し、その取組は全国規模で進められています。 村上社長は「エコウィンが世の中に広く普及し、量産されて、エアコンの様にもっと身近な存在になり、一般住宅や商業施設まで導入され、環境保全に本当の意味で貢献するのが夢です。」と語ってくれました。
<エコウィンの特長>
・〔熱効率〕:360度全方向に遠赤外線放射(暖房)・吸熱作用(冷房)。人体やモノへ熱が直接的に伝播、体感に作用するので高効率。設定温度よりも、暖房で4℃~5℃程度暖かく感じ、冷房で3℃~4℃程度低く感じられる。
・〔運転方法〕:熱容量が少ないので立ち上がりが早く、タイマー運転が可能。
・〔立ち上がり時間〕:約15分程度で設定温度に達し、暖・冷輻射を体感できる。
・〔冷暖房方式〕:輻射(大)+自然対流(小) ※7:3の割合
・〔省エネ性〕:強制対流方式(エアーコンディショナー)と比較し、約3割の削減効果。
・〔健康・快適性〕:遠赤外線輻射に特化し、人体や床・壁・天井を直接的に熱交換するので、空間内における上下水平の温度ムラが少なく快適。風が無く埃も巻き上げないのでアレルギーや、院内感染の抑制に寄与できる。
・〔静音性〕:エコウィン本体は駆動部がないため無音、無風。ノイズの発生もない。
・〔安全性〕:ぶつかっても円柱形の発熱部なので、けがをする可能性が低く安心。低温輻射(40~50℃程度)のためヤケドの心配もない。
・〔湿度〕:対流式と比べ空気を乾燥させず、湿度を一定に保つことが出来る。
・〔重量、耐震性〕:標準タイプで70㎏、従来品(鉄製)の1/2以下と軽量。搬入コストを抑え、更に 地震応力が小さいため、転倒リスクが低くなり、安全・安心。
・〔搬入方法〕:分解搬入・現地組み立てが可能。リフォーム・リノベーション等にも配慮。
・〔水量比較〕:従来システム(鋼鉄製ラジエーター)と比較して約1/4の水量。
・〔省資源、メンテナンス性〕:パーツで構成され、分解・完全分別が可能。高い輻射、熱交換性で発熱部分が 少なく、省資源。修理の際はパーツ毎に交換が可能。
・〔製品寿命〕:無動力のため故障リスクが低く、アルミサッシュと同等の高耐久のアルミ製で腐食の心配もない。 熱媒体として防錆剤入不凍液を使用するため、熱交換器等の機器類を傷める心配が少なく長寿命。